普段何気なく使っているラベルがどのように誕生したかということはあまり知られていないと思います。ラベル自体は太古の昔から陶器や武器に簡単な印を付けるものとして使用されていたことが確認されています。ですが、現在のように粘着ラベルが一般的に使用されるようになったのは、現在のAvery Dennison社の創始者であるスタン・エイブリイ氏の存在が大きなウェイトを占めています。このスタン・エイブリイは直感力と科学的探究心に優れ、興味のあることは何でもやらなければ気が済まないという性分の持ち主でした。ですが、彼は科学や技術的なトレーニングを受けたことがなく知識もほとんどありませんでした。
そんなとき、彼が働いていた「ADHERE PAPER CO」は1934年に大恐慌のあおりで倒産してしまい彼は職を失ってしまいます。しかし、彼は持ち前の性格から最後の貯金を「ゴムタック」の開発につぎ込むことを決心しました。そして、1935年のはじめにロサンゼルス、サウスウォールストリート737のロフトで世界初の商業用自己粘着ラベル「kum-kleen」を開発し、製造を開始したのです。それは洗濯機のモーターとミシンのクラッチを使って作られた機械で製造されたプライスラベルでした。当時、ラベル貼りはブラシで糊をラベルに塗るという面倒な作業であったため、速く、きれいに貼れる彼のラベルは大流行しました。しかし、発明者として、スタンはこれだけにとどまらず、改良を続け、発明を洗練して自己粘着技術の用途を拡大し、数々の機械と加工技術を開発しました。そして彼は伝統的なゴムベースの粘着剤より強くて、より信頼性の高い合成自己粘着剤を開発します。その他にもラベルディスペンサーやラベル印刷から加工までをインラインで行う機械を最初に世に紹介したのも彼でした。さらには、ラベル製造用のダイカット(粘着紙をラベルの形に切ること)方法を最初に考案し、数年後には18の特許を取得します。こうして現在の粘着ラベル技術の基礎を築き、それらは今でも使われているのです。
また、良くラベルに使われるシールの歴史はさらに古く、初めて使われたのは古代エジプト時代と言われています。このころのシールは紙の原型と言われているパピルスをリボン状に作り、裏側に粘土を付け、署名代わりに文書や証書に貼り付けて使用していたと言われています。そしてその後、国璽と呼ばれる国家の表徴として押す印章も『Great Seal』と呼ばれるなど、シールは特別な、格式高いものとされていきました。そして、日本で初めて作られたシール印刷は、1911年の事になります。日露戦争の際にイギリス皇室からの贈り物に貼られていた菊の御紋章のシールと同じ物を作るようにと、宮内省(現在の宮内庁)から注文があったのです。この時の製造理由は、1911年6月22日に行われたイギリス国王ジョージ5世の戴冠式に参列した東伏見宮依仁親王が、贈り物を封鍼する為の封鍼シールとして使おうと考えた為です。しかし、この当時の技術力ではイギリスから送られてきたシールを再現するのは難しく、多大な時間と労力を費やして作られました。
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Last update:2022/8/30